歯医者での治療で一番いやなことは何でしょうか?歯を削ること?型取りすること?いろいろありますが、一番多いのはおそらくは麻酔だと思います。麻酔は痛いことが多くせっかく麻酔で痛い思いをしたのに、うまく効かなくてつらい思いをした方もいると思います。
今回はそんなつらい経験をする方を一人でも減らすために麻酔の仕組みと痛くない麻酔について大きくつに分けて書いていきます。
まずは麻酔の仕組みについて説明します。麻酔とは人が感じる痛みの刺激を脳まで到達するのを防ぐことで痛みを軽減しています。
これだけでは意味が分からないと思いますので、詳しく説明していきます。そもそも痛みは痛みを感じた場所から神経を通って電気信号で脳に伝わることで感じます。つまり痛みを感じているのはその場所ではなく脳ということになります。場所によって通っている神経の数が異なり、脳に刺激を伝える神経が多いところは痛みを感じやすく敏感になるため、場所によって痛みの感じ方が変わってきます。そのため、痛みを感じる一番の要因である脳を麻痺させると一番早いですが、脳を麻痺させると後遺症が残ったり、麻酔がさめるまで時間がかかってしまうため、痛みを感じる場所のみ刺激を遮断させます。
麻酔は電気信号を送れないようにすることで痛みを感じなくなりますが、歯科用の麻酔は麻酔薬にアドレナリンが添加されているものが多いです。
なぜアドレナリンが添加されているものが多いかというと、アドレナリンを添加することによって血管が収縮し、麻酔薬が麻酔したところにとどまる時間が増えるからです。歯科の治療は大体30分~1時間前後で終わりますが、場合によってはそれ以上にかかってしまうこともあります。アドレナリンを添加することで麻酔の効果時間を2~3時間に延ばすことができて、痛みを感じないまま治療を終えることができます。
結論から言うと、完全に麻酔時の痛みをなくすことは不可能です。麻酔する際にチクっと痛みを感じると思いますが、これは麻酔薬を体内に注入するために針を刺している痛みです。針を刺さないと部分的に麻酔を効かせることが不可能ですので、体全体に麻酔をかけていくしかありません。そのため、針を刺すことは必要不可欠です。
針を刺した痛みを軽減することはできないのか?多少なら軽減することができます。それが麻酔を打つところに表面の麻酔を効かせることです。表面の麻酔は麻酔を打とうとしている箇所に塗ることによって、表面の感覚が麻痺するので針を刺した際の痛みが感じにくくなり痛みが軽減します。
麻酔を打ったのに治療中に痛みを感じた経験はないでしょうか?せっかく痛い思いをして麻酔したのになぜ痛いのか疑問に思ったことはあると思います。麻酔したのに痛みがある場合は2つほど理由が考えられます。
一つ目が治療するところの炎症が強い場合です。麻酔薬は炎症が強いところで作用が弱くなる性質を持っています。そのため、現在歯が痛いなどの炎症が強い歯には麻酔が利きにくいです。そのため、一度炎症が収まってからの治療が望ましいです。しかし、どうしても痛いので治療してほしい場合は麻酔の量を増やして治療を行います。
二つ目が下の奥歯の治療の場合です。下の顎の骨は上の顎の骨と比べて分厚いため、上の歯と同じ量の麻酔を打っても麻酔が利きにくいです。そのため、下の顎の治療には伝達麻酔という普通の麻酔と異なる麻酔の仕方を行います。伝達麻酔は下の顎が全体的に麻痺しますが、麻酔が良く効くため痛みがなく治療することができます。
先ほど出てきた伝達麻酔という方法とは何なのかについて説明していきます。伝達麻酔は下の歯を治療する際に用いる麻酔方法で骨が厚い部分ではなくて骨のうすい顎の付け根のほうに麻酔を効かせて顎を全体的に麻痺させる方法です。
歯に通っている神経は顎の付け根のほうから通ってきて歯に入っていきますので、その大本である付け根の神経を麻痺させることで歯に麻酔をかけます。通常の麻酔と比べて痛みは少ないですが、麻酔が切れるのに時間がかかる点や打つ方向が悪いと麻痺が残ってしまうことがある点はデメリットとなりますが、打つ方向は麻酔を打つ前に最終確認をしてから行うため、麻痺が残ることはほとんどありません。下の歯の治療を行う際は伝達麻酔をすると痛みなくできますので、伝達麻酔をすることがおすすめです。
今回は麻酔について書いていきました。麻酔は治療するうえでは欠かせない工程なので絶対行う必要がありますが、歯医者嫌いになる一番の要因にもなりえます。今回の麻酔の話で痛くない麻酔や麻酔の重要性を理解していただけたら幸いです。