虫歯の治療のうち、虫歯が大きい場合詰め物(インレー・アンレー)や被せ物にする治療があります。詰め物や被せ物にする治療のことを間接修復と言いますが、間接修復とはいったいどんな治療なのでしょうか?来院する回数が多くなるため、患者さんの負担が大きいことが挙げられますが、メリットは何なのでしょうか?
今回はそんな疑問について書いていこうと思います。
まずは間接修復について説明していきます。間接修復とは虫歯を取り切った後残る穴に最終的な材料を詰めるのではなく、形を整えて型取りをしてから仮の材料で蓋をします。型取りを基に作った模型に合うような形の詰め物を作り、それを蓋していた場所に接着剤でつけることで虫歯でできた穴を埋めるという治療です。
間接修復は型取りをして、口の外に口と同じ状態の模型を作ることで口の外で作業できるということが一番の特徴となる治療です。悔いの外で作業することにどんなメリットがあるのかについて説明していきます。
まず一つ目は治療中の患者さんの負担の少なさが挙げられます。虫歯をとった後に最終的な詰め物をすぐに詰める方法である直接修復では、詰め物を詰めている間ずっと患者さんに口を開けていてもらう必要があります。そのため、詰め物がうまく入らずやり直したり形を作ったりしている間、ずっと口を開けていなければならずとても疲れてしまいます。ラバーダムという処置をしていれば問題ありませんが、していなければお口をずっと開けておくのは大変ですし、奥のほうだと唾が入るといけないため、風をかけられ続けて口が乾いてしまうことがあります。しかし、間接修復では形を作る作業はありますが、形を作ってしまえば型取りは一回5分程度で終わりますし、うまく取れず、2,3回取り直しても10分程度で終わる上、型取りの最中はずっと開けておく必要がありません。詰め物をつける時も高さや歯と歯の間のきつさの調整は必要ですが、お口の中での作業は10分程度なのでずっと開けていて辛いということはありません。
続いて二つ目は詰め物の精度です。お口の中で詰め物をするとしっかり奥のほうまで詰まっているかの確認ができない上に狭い作業スペースの中で行わなくてはならないため、綺麗に詰めることが難しいです。真ん中だけに虫歯がある場合や前歯の虫歯の場合は見やすいため比較的綺麗に詰めることが可能ですが、奥歯で真ん中だけど深い虫歯や歯と歯の間から進行している虫歯は見えにくいため、綺麗に詰めることはとても難しいです。歯と歯の間はそのまま詰めてしまうと隣の歯との隙間がなくなってしまうため、いろいろな道具を用いて詰めますが、その道具がうまく入らなかったり、歯の形が歪でうまく形が作れなかったりすることがあります。うまく詰めることができず、歯と段差ができてしまってそこから新たに虫歯になってしまうこともあります。しかし、間接修復ではお口の外で詰め物を製作できるため、製作時にいろいろな角度から見ることができるため、歯との段差ができにくかったり、歯の形をきれいに直せたり、奥までしっかり詰め物が入ります。そのため、再び虫歯になりにくいです。
最後は使うことができる材料の違いです。お口の中で詰める材料はお口の中で安全に使用できるものである分必要な条件が多くなってしまいます。間接修復では必要のない条件として、液状から固体状に変形する、液状の際にお口の中に危険な状態でない、歯と接着する材料であるという大きく分けて3つの要素が必要となってきます。以上の3つの条件を満たすことができて、詰める材料として最低限の強度がある材料はレジンとGI(グラスアイオノマーセメント)とアマルガムの3つになります。したがって用いることができる材料はこの3種類しかないことになります。一方で、間接修復は3つの条件を必要としないため、金や銀などの溶かすことのできる金属やセラミックやジルコニアなどの液状にならない材料を使うことができます。これらの材料はレジンとGIより強度が高く、壊れにくい性質があります。そのため、間接修復のほうが長持ちすることが多いです。
間接修復のメリットをお話してきましたが、もちろんメリットだけではありません。デメリットも存在するので説明していきます。
まず一つ目は来院回数の多さです。先ほどは負担が少ないと説明しましたが、それはあくまで治療中の負担が少ないだけであって、形を作る、型を取る、詰め物を接着剤でつけるという3つの作業が増えているため、すぐに埋める治療に比べて病院へ行かないといけない回数は多くなってしまいます。
次に感染のリスクの高さです。詰め物の型取りをしてから、詰め物ができるまでの期間仮の材料で埋めておく必要があるため、仮の材料で埋めている間に感染してしまうリスクがあります。詰め物をつける前によく洗浄を行うためリスクは少ないですが、感染してしまうと詰め物の下で虫歯になってしまいます。
次が型取りの精度です。型取りはどんなに正確に型をとれるものを使っても多少なりともずれが生じてきてしまいます。これは歯が複雑な構造をしているためです。歯は根元の所が一番太いわけではなく根元の少し上が一番太い構造をしています。仮に全く変形しない材料で型取りをすると正確に型取りはできますが、外せなくなってしまいます。そのため、歯科で用いる型取りの材料は外せるように少し変形できるようになっているため、実物と多少誤差が生じてしまいます。誤差が生じている模型で製作するので詰め物にも多少の誤差が出てしまいます。しかし、この誤差は接着剤の厚さで補える程度だと言われているため、心配するほどではありません。
最後に歯の削る量の多さです。間接修復で用いる材料は変形しないため、詰め物をつける時に詰め物の形と同じまたは大きいところでないと入れることができません。そのため実際は虫歯ではないところも詰め物が入るようにするために削る必要が出てきます、また、薄くなりすぎると詰め物が割れたり、逆に歯が欠けたりしてしまうリスクがあるため、本来削る必要がないところも場合によっては削る必要が出てきます。削る量が増えればそれだけ歯の神経に近いところまで削らなくてはならないため、痛みが出てくるリスクも増えてしまいます。
今回は間接修復について説明しました。いろいろなメリットがありますが、もちろんデメリットもある治療です。基本的には間接修復するかどうかは担当Drが決めるため、患者さんが考えることはないのですが、患者さんには早く治療を終わらせてほしい方が多く、間接修復は嫌がられる傾向にあります。そのため、間接修復をあまり行わないようにしているDrもいますので、これを読んで間接修復の良さに気づかれた方は、虫歯が大きかったら詰め物にしてくださいとお願いしたら詰め物にしてもらえると思います。一人でも多くの患者さんが適切な治療を受けられるように願っております。