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型取りに使う材料とは?

 詰め物や入れ歯の治療で必要になってくるのが型取りの作業です。いつもされるがままに行われていて何の材料で型取りをしているか知らない患者さんも多いので歯にでしょうか?

 今回は型取りに用いる材料について書いていきます。材料によって性質は全く異なりますので、適切な材料を用いられているか知っておきましょう。

①そもそも型取りって?

 そもそも型取りとはどういうものでなぜ必要なのかから説明していきます。

 型取りとは入れ歯や詰め物を作る際に必要となる作業で、お口の中で作ることができないものを作る際に行います。液状から固体へ変化する材料を用いて、液状で歯の形や歯茎の形にそうように入り込み、そのまま固体になった後に取り外すことで歯の形や歯茎の形が記録されます。記録された状態にところに石膏を流すことによってお口の中の状態をお口の外で再現します。再現した模型上で詰め物や入れ歯を作ることでお口の中で作れないものを作ることを可能にしています。

 

②型取りに使われる材料

 次に型取りをするときにどんな材料を使うのかについて説明していきます。

 まず一番歯科で使われている型取りの材料のアルジネートです。これは海藻の糖分を用いた材料で普段の食生活にもとろみをつけるために応用されている材料です。水と反応して徐々に液状から固体に変わっていき硬くなっていきます。水と混ぜてから大体3~4分で固まります。アルジネートのメリットとしては操作がとても楽で、安価であることが挙げられます。また、固まっても柔らかいため深くへこんでいる場所があっても型を取ることができます。逆にデメリットとしては柔らかすぎるため、変形がしやすいことと細かいところを正確に型取りできないことが挙げられます。これらの特徴から主に用いられるのは最初の大体の歯の構造を見たいときに行う型取りや、入れ歯の型取り、詰め物や被せ物を作る際の反対の顎の型取りに用います。

 次にアルジネートと用いられる寒天です。寒天は食べる寒天とほとんど同じ成分で温度変化により液状と固体に変化します。熱くすれば液状になり常温で固体になります。型取りする際にやけどしないように40度前後になるように温度調整をされていて、温度が下がると固まります。寒天のメリットとしては操作が楽で安価、細かいところまで入り込みやすいことが挙げられます。逆にデメリットは固まるのが早いため、大きい範囲の型取りには向いていないこと、温度管理が難しくうまく型取りできないことがあることが挙げられます。これらの特徴から寒天はアルジネートと一緒に使い、細かいところを寒天で取り、ほかの部分をアルジネートで取る際に用いられます。

 最後にシリコンゴムです。シリコンゴム印象材は歯科に用いられている型取りの材料でゴムのような性質を持っています。二種類の材料を混ぜ合わせることで液状から固体に変化し始め、時間で完全に固体になります。ゴムのように伸びたり縮んだりするためへこんだ場所でも型を取ることができますが、基本的に硬い性質も持ち合わせているのであまり大きいと外せなくなってしまいます。硬い性質があるため変形量が少なく、正確な型取りを行うことができます。しかしコストがかかってしまうことがデメリットになるため、保険では型取りはとても安く設定されているため、保険内の治療には用いられることは非常に少ないです。主に自由診療で用いられます。

 

③適切な型取りの材料は?

 型取りの材料の種類について理解してもらえたでしょうか?次は治療ごとにどの材料を用いるのが最適かについて説明していきます。

 まずは治療を行っている場所ではないところの型取りです。主に最初の歯の状態を見るための型取りや詰め物、被せ物の治療を行った時の反対側の顎の型取りに使う材料として適切なのはアルジネートです。アルジネートの特徴は先ほども説明した通り、操作が簡単で大体の型取りができることです。取り外しも楽に行うことができるため細かいところの精度が必要なければアルジネートはとても優秀です。また変形する量が2~3㎜と大きいため、前歯が極端に前に倒れていたり、歯が根元の所が細くなっていたり、歯がグラグラするところがあっても型取りを行うことができます。

 次に詰め物や被せ物などの型取りです。これに用いるのは寒天とアルジネートを一緒に使うかまたはシリコンゴムが良いです。より正確に型取りができるシリコンゴムが一番いいでしょう。これらの材料は細かいところに直接流し込むことができる上に変形量が少ないため、実際のお口の中の状況をほとんど正確に再現することができます。シリコンゴムの場合は硬いため、取り外しの際にすごい力がかかってしまうことがあります。

 最後に入れ歯の型取りです。これに用いるのがアルジネートかシリコンゴムです。アルジネートで取る場合は細かいところの正確な型取りができないため、金具がうまくはまらない可能性があります。また、入れ歯は残っている歯だけではなく歯茎や頬、筋肉の動きなどの柔らかいところや動く箇所も型取りしないといけないため、固まる時間が早いとうまく型取りが行えないです。そのため、シリコンゴムを用いる際は固まるのが遅いものを用います。お口の中でゆっくり固まっていくので筋肉を動かしてもらいながらその動きを型取りに再現することができます。

 

④個人トレーとは?

 型取りに用いるトレーは基本的に既成トレーと言っていろいろなお口の大きさに合わせたトレーを用います。このトレーは大体の大きさを合わせることができるため、初めて型取りを行う際にとても有用なトレーになります。しかし、患者さんのお口の大きさにぴったりと合っているわけではないので型取りの材料が余る場所があったり、場所によっては正確に型取りができない場所があります。既成トレーとは別に個人トレーというものがあります。個人トレーとは患者さん一人一人のお口に合わせたトレーのことを言います。最初に取った型取りを基にこの個人トレーを作ります。個人トレーには様々な利点があります。

 まずはお口の形に合って作られているので正確な型取りができる点です。トレーがお口の形にあっているため、正しい位置に力がかかりやすくなっているため、既成トレーより正確な型を取ることができます。

 次に型取りの材料の無駄をなくす点です。既成トレーと実際の歯は離れていることが多いため、型取りの材料を多く使わないと型取りの材料が足りず、うまく型取りができないことがあります。そのため、無駄になってしまう部分が多く出てしまいます。その一方で、個人トレーは実際の歯に沿って作られているため、材料を多く使わなくても足りなくなることがなく、綺麗に型取りができます。また、型取りの材料の厚みが全体的に均一になるため、型取りをした後に型取りの材料がゆがむなどの現象が起きにくいです。

 最後にお口の中を傷つけない点です。既成トレーは形が決まっていて歯の部分も平らになっているため、位置が定まらず、歯茎にぶつかってしまったり骨が飛び出ているところにぶつかって痛かったりしてしまいます。しかし、個人トレーは歯の形に添って作っているので位置が定まる上、歯茎にぶつからないように作っているので、歯茎などにぶつかっていたいという事態を避けることができます。

 

⑤まとめ

 今回は型取りの材料について説明していきました。型取りの材料はいろいろありますが、それぞれ用途が異なります。また、同じ材料でも作っているメーカーによって性能に大きな違いがあったりします。型取りは歯の治療を進めていくうえでとても大切な工程です。この工程に使う材料はとても大切であるため、どんな材料を用いているかしっかり確認することをお勧めします。