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消毒の常識が変わる?強酸性水って?

 歯医者で一番大切な作業は何かわかりますか?治療?メンテナンス?掃除?

 実は器具の滅菌作業なのです。前の患者さんに使った器具をそのまま使われてると考えると想像しただけで怖いですよね。

 治療によっては血が出ることもあるため、歯科で用いる器具は滅菌が必要になってきます。滅菌とはどういう作業なのでしょうか?

 今回は歯科で行われている滅菌作業について書いていきます。

①そもそも滅菌とは?

 私たちの身の回りに多く存在する細菌、特に口の中には約数千億個の細菌が存在していると言われています。そのような細菌だらけの口の中で使用した器具はもちろん細菌だらけになっています。これらの細菌の数を減らす作業が滅菌作業になります。アルコールなどで行う消毒作業に比べて、減らすことのできる細菌の種類が多く、減らす量も多い作業が滅菌作業になります。人の病気にはインフルエンザや新型コロナウイルスのような空気中にとんだ飛沫で感染する病気だけではなく、B型肝炎やAIDsなど血液を介して感染する病気もあります。もちろん空気を介して感染する病気のほうが感染はしやすいですが、血液を介して感染する病気は感染力が強く、菌がなかなか死なないのに加えて少量で感染がおこります。

 そのため、出血が起こる可能性が高い医療現場(もちろん歯科も含まれます)では高いレベルの滅菌作業が求められるのです。

 

②歯科で行われている滅菌作業

 実際にはどういう作業が行われているのでしょうか?一般的に行われている作業はオートクレーブ滅菌というものです。これは専用の機械で2気圧121度、20分以上と決められた環境で滅菌を行うものです。この滅菌作業は非常に高い効果を得られ、一部の滅菌に高い耐性を持つ細菌を除いてほとんどの菌を死滅させることができます。一部の細菌は滅菌に高い耐性を持っていますが、感染力がとても低いため、免疫力がすごく落ちるAIDsなどの病気の方や高齢者の中でも持病持ちの人などにしか感染がおこりません。一般歯科にいらっしゃる患者さんは基本的にはそのような免疫力がとても低い方はいらっしゃらないため、この滅菌作業で十分だと言えます。この作業を患者さんに使用した器具すべてに用いていきます。基本的にいいことしかない滅菌作業ですが、もちろんデメリットもあります。それは費用が掛かる点と滅菌作業を行うと器具が徐々に痛んできてしまうという点、使用できる材料に制限がある点です。

 一つ目のデメリットである費用が掛かることに関しては、もともとの機材にとてもお金がかかります。作業に用いるものは機械と水と電気だけなので機材があれば費用は掛からないですが、滅菌作業中は器具を使うことができないため、滅菌作業の20分以外にも乾燥作業や冷却時間を考えると1時間は使用することができません。そのため、治療に用いた器具は最低でも1時間は使用できなくなってしまいます。一時間に一度の治療を行うならば、同じものが3個もあれば十分に治療を行うことができますが、一般の保険の診療を行っている歯科では30分に2つほどは治療があることが多いため、最低でも6個は器具が必要です。また、一時間ごとに滅菌作業を行うことは通常できないため、10個ほどないと治療が行えなくなってしまいます。歯科に用いる器具はとても高いので、10個用意すると費用が掛かってしまいます。

 二つ目のデメリットである器具が痛んできてしまうことに関しては、オートクレーブ滅菌を行うたびに器具の寿命が縮んでいきます。その結果器具の修理する頻度や買いなおす頻度が増えてしまうため、器具にかかる費用が上がってしまいます。先ほど説明した必要個数を合わせると一回の治療にかかる費用がとても大きくなってしまいます。

 三つ目のデメリットである使用できる器具に制限があることに関しては、オートクレーブ滅菌の作業に必須な高温での滅菌に耐えられる器具でないとオートクレーブ滅菌を行うことができません。例えば、熱で形が変わってしまうプラスチック製品、顕微鏡などの光学製品に用いることができません。それらの器具はまた別の方法で滅菌する必要があります。

 以上の理由から保険診療を多く行っている医院では歯科の保険診療の安さと歯科材料の高さが相まって器具をオートクレーブ滅菌ではなく、簡易滅菌を行う医院が数多く存在します。当院は完全自由診療のため、治療の間隔を長くとることができ、毎回治療が終わるごとに器具はすべてオートクレーブ滅菌をかけております。そのため安心して治療を受けていただけます。

 

③当院で取り入れている消毒作業

 先ほどは一般的に歯科で用いられている滅菌作業について説明しました。当院はこれとは別に強酸性水という液体を用いた消毒作業を行っております。これはとても消毒作用が強い強酸性の溶液を用いて消毒を行う方法で、この溶液の優れているところは人間に害が全くない点です。強酸性の溶液は通常は消毒作用が強いですが同時に人体へ悪影響を及ぼす作用も強いため、人体でも防御力の低い粘膜に触れることの多い歯科では使用することが難しいです。しかし、強酸性水はそのような心配がなく用いることができ、器具の消毒はもちろんのこと、ユニットやオートクレーブ滅菌を行うことのできないプラスチック、顕微鏡などを消毒することができます。

 強酸性水のさらに優れているところはただの水に溶かすだけで用いることができるため、強酸性水に変換する機会さえ買ってしまえばあとはほとんど費用が掛からない点です。そのため、当院では治療に用いる水も強酸性水を用いて治療を行っています。通常治療には普通の水を用いるため、ホース内にカビなどが生えてしまったり、治療部位が感染の危険にさらされる恐れがありますが、強酸性水の場合その心配がありません。そのため、患者さんには安心して治療を受けていただくことができます。

 

④まとめ

 今回は歯科医院で行われている消毒方法について書いていきました。歯科医院は老若男女問わずたくさんの方が訪れる上、治療中はマスクせずに唾が飛び放題の環境であるため、どうしても感染のリスクを下げることが難しいです。そのため、日々の消毒作業や滅菌作業が感染のリスクを下げるのにとても重要なことが分かると思います。しかし、同時にこの作業はとてもコストがかかるため、省略されてしまっているケースもあることも分かっていただけたのではないでしょうか?これらを踏まえてしっかり消毒を行っている医院に通うことをお勧めします。